終らないお祭り騒ぎ

うる星やつら2:ビューティフル・ドリーマー


1984/98分/東宝

彼の名が初めて大きく取り上げられたのは、1984年のビューティフル・ドリーマーで あったようです。
原作の「うる星やつら」といえば、高橋留美子の人気コミックで、 当時のアニメファンには絶大な人気を誇っていました。 「押井守が描いたからうる星に人気が出た」のか、 「うる星を描いたから押井の人気が出た」のかは何とも言えず、 むしろ後者の方が大きかったのかも知れませんが、 この大きな作品を借りて、彼は俗に言われる「押井ワールド」を完成させました。 それが、このビューティフル・ドリーマーです。

この作品は、映画評論家、評論家的見方をする一部アニメファン等には、 絶大な支持を受けました。
それは、彼がいわゆるアニメにこだわらない、 「映画」としての密度を持ったアニメーションを作ろうとしたことによると思います。
この作品のテーマ、「この世界は夢なんじゃないか?」という問いかけが、 この一見オタク的なアニメの全編を貫いて繰り返し提示されます。
永遠に終らない文化祭。永遠に終らないお祭り騒ぎ。
夢というテーマを、本当にあからさまに、 アニメの中で取り上げたこの作品は、 彼の作品群の大きなターニングポイントとなりました。

主人公で、ヒロインである「ラム」は、この作品ではほとんど活躍しません。 目覚めぬ彼女の夢の中で物語が進行するからです。
それでも、この作品はいわゆる「アニメファン」にも支持されました。 「うる星」がそれだけ懐の深い作品であったと言う証拠なのか、 押井ワールドが支持されたのかは定かではありませんが、 彼はこの作品から、彼の世界を前面に押し出すようになったと感じます。
演出家としての彼に、自信を持ったのではないでしょうか。

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