ゲームはルールが明確で評価がしやすい(勝ち負けとして性能がはっきりと現われる)さらにはそれ自体が興味深いという特徴を有しているため、情報処理の例題として外国では古くから盛んに用いられてきました。特にチェスは人工知能の実蝿(みばえ)として、探索、データベース、機械学習、専用アーキテ クチャなど広い範囲で大きな成果をあげてきました。またパズルもアルゴリズム の研究開発に大いに貢献してきました。しかし残念ながら日本ではゲームやパズルを例題とした研究が少なく、情報処理において世界に遅れをとる一つの要因ともなってきたと思われます。
1994年からコンピュータ将棋協会とコンピュータ囲碁フォーラムという 任意団体の組織が中心となってゲーム・プログラミングワークショップが毎年開催されています。多くの発表、多く の参加者を集めています。(第12回(2007年)から、当研究会が主催を引き継ぎ、毎年開催しております。)また1997年に始まったロボットサッカー大会RoboCupでも、世界中の多くの参加者に交じって日本からの参加者が活躍しています。シミュレーションのサッカーはマルチエージェントのゲームと見なすことができます。このように幸いゲームに関する研究者も増え、研究の質も 向上しつつありますが、これまで国内の学会で中心となって活動するための適切な場が存在しませんでした。ゲームに興味のある広い範囲の関係者を結集する場が必要となっていると考えます。
ゲームには、チェスタイプの二人完全情報ゲームでチェスより問題空間が はるかに大きい将棋や囲碁、不完全情報ゲームのコントラクトブリッジやポーカー、さらには実時間のマルチエージェントシステムであるサッカー というように、情報処理的にさまざまな異なる性質を有する例題が数多く 存在します。さらにはゲームととらえることによって新たな知見が得られる ことのできる現象も数多く存在します。たとえば、進化論をゲーム的に考えたり、社会学の知見をゲームとして定式化したりといったことが盛んに試み られています。さらには、ゲームの強いプログラムを目指すだけでなく、 コンピュータを用いてゲーム自体の歴史的あるいは社会的な研究を行なうの も興味深いことです。たとえば、「どういうゲームが世間に受けるのか」を コンピュータを用いて分析することは応用の側面からも重要と考えられます。
このように優れた例題であるゲームを対象とした研究を、コンピュータ チェスが人間の世界チャンピオンに勝つまでになったいまこそ、世界的に中心 となって押し進めることが日本の情報処理技術の発展に貢献すると考え、広い意味でゲームに関連したこの新しい研究領域を新たに「ゲーム情報学」と名付け、 その研究会を発足させました。
石田亨(京都大学) 石原孝一郎(拓殖大学) 飯田弘之(静岡大学) 伊藤毅志(電気通信大学) 鎌田真人(岩手県立大学宮古短期大学部) 北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所) 小島琢矢(NTT基礎研究所) 小谷善行(東京農工大) 小山謙二(NTTコミュニケーション科学研究所) 佐藤健(北海道大学) 実近憲昭(電子技術総合研究所) 清水賢資(群馬大学) 清愼一((株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ) 滝沢武信(早稲田大学) 竹内郁雄(電気通信大学) 田島守彦(電子技術総合研究所) 田中哲朗(東京大学) 田中庸彦(日本大学) 中島秀之(電子技術総合研究所) 中村貞吾(九州工業大学) 中山泰一(電気通信大学) 橋田浩一(電子技術総合研究所) 平賀譲(図書館情報大学) 福島康治((株)インテリジェントテクノロジー) 松原仁(電子技術総合研究所) 吉川厚(NTT基礎研究所)
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